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15 2015

最先端の科学は子どもの知的興味を引き出す 日本大学presents理科実験教室

いきなりぶっちゃけた話で恐縮ですが、学校の理科の実験はあまり好きではありませんでした。理科は私にとって現在の職業の根幹となる科目であり、それはそれは得意科目かつ好きな科目だったのです。が、実験は好きではありませんでした。

理科は実験が楽しい!という小学生は多く、理科嫌いって都市伝説?と思ってしまうくらいですが、学年が進むにつれて、いつの間にか理科嫌いが増えていくという印象があります。低学年のときは目を輝かせていたはずなのに、なぜ高学年になると「理科はつまらない」という子どもが増えてしまうのでしょう。

それは「初見」がキーワードだと思います。知らないこと、見たことがないこと、新しいことを知る喜びは、子どもたちの興味を惹きつけます。理科という科目を勉強し始めた当時、見るもの全てが新たな知であり、好奇心を喚起されるのに足る科目だったのでしょう。

ですが、学年が上がると気づいてしまいます。

「……教科書と同じだ」

教科書に載っている実験と同じものしかやらない。結果もそこに書いてある。実験は、教科書通りになることを確かめる儀式と化してしまいます。日頃の謎を解くのが理科の醍醐味であるにも関わらず、先の見えることしかやらない学習と「思われて」しまい、徐々に興味が失われているのが実情です。

以上は私の小学校時代を振り返った考察ですが、それほど的外れではないと思います。

そんな子どもたちの失われつつある理科への学習意欲を取り戻すキッカケとなるイベント、理科実験教室が日本大学生物資源科学部の全面協力のもと、日本大学湘南キャンパスで行われました。

参加できる人数が限られており、エコール学院からは小中学生8名の参加となりました。


初めて見る大学に圧倒される子どもたち


恐らく大学に入るのは初めてであろう中高生。入口の巨大な看板を横目にキャンパスへ入ると、そこに広がるのは公園さながらの緑あふれる敷地と近代的なデザインの建物。


美観より真夏の日差しを心配してしまう総ガラス張りの建物

子どもたちから聞こえるのは

「すげー」「でけー」「ほー」

という感想。「大学ってすごいね~」なんていう無邪気な感想がほほえましいですが、残念、ここは田舎もとい地方都市だからこその広大な敷地。皆さんが目指すであろう東京の大学は基本的に狭いです。それでも中高生の想像よりも広いでしょうが、日本大学湘南キャンパスは規格外です。お約束の東京ドーム比較で12個分という広さです。

広すぎてむしろわかりません。

そして案内されたのは、とても大学っぽい講義室。黒板の左右にはスクリーンが設置されており、ひな壇の傾斜がほどよく俯瞰しやすい構造でした。


200名ほどの講義室。きっと小中学生は教室だと思っていない。

ここでコースが2つに分かれます。小学生と中学生で実験の難易度が違います。私は中学生コースに同行しました。


パン酵母のはたらきを調べよう


「酵母」とは、菌類の一種で、れっきとした生物です。中学3年生で学習する「菌類・細菌類」で登場します。~菌とつく生物はほとんどが細菌類なのですが、酵母菌はフェイントで菌類という罠を仕掛けてくる奴です。

この酵母というイキモノ、我々と違って酸素なしでも呼吸をする上、二酸化炭素とアルコールを作ります。大変ありがたい生物です(←)。

発生した二酸化炭素はパンを膨らませるために使われます。パン作りに欠かせない「イースト菌」の正体は酵母です。そして、アルコールはもちろん酒造りに利用されます。これが酸素なしに行われるという奇跡のような生物です(わりとそうでもない)。

酵母が呼吸で使うのは「糖」。今回の実験は、砂糖水に酵母を入れ、そのときに発生する2つの物質を調べましょう、という趣旨です。

使用する薬品は2つ。中学校でもおなじみの「BTB液」。そして、なじみの無い「NR」です。NRは「ニュートラルレッド」の略称で、アルカリ性では黄色、酸性では鮮やかな赤に変わります。BTBの地味めな色と異なり、見た目にインパクトがあるので、中学生が食いつきそうな薬品だと思います。

まずは教授にデモンストレーションをして頂きました。実験装置の組む手順など、聞き逃すとあとで困るので、みな真剣に話を聞きます。


真剣な表情の中学生たち。学校の授業ではいかに。

酵母は見た目がただの粉末なので、イマイチピンと来ていない中学生たち。研究室の学生さんにサポートをして頂き、着々と実験装置の準備が進んでいきます。

私が見ていた班は4人グループ。2人ずつに分かれ、BTB組とNR組に分かれます。


BTB組は青色からスタート。とても綺麗。


NR組は最初黄色とオレンジの中間のような色。ちょっと微妙。


蚊が人間に寄ってくるメカニズムは


酵母も生き物ですから、化学実験のように瞬間的な反応をするわけではありません。環境が整ってしばらくしないと呼吸が盛んに行われないため、教授曰く30分程度はかかるということです。

その時間を利用して、教授から興味深いお話がありました。

夏に話題になった「デング熱」。その感染源(媒体)となったは蚊でした。この蚊を収集する装置を見せて頂きました。

装置の構造は簡単で、二酸化炭素を放出する装置にファンとストッキングがついています。蚊は二酸化炭素を感知して寄ってきます。この性質を利用して、近づいてきた蚊をファンによってストッキングをつけたフィルター部分に送り、蚊を採集するという仕組みです。

人間の吐く二酸化炭素を感知して蚊が寄ってくるという知識、中学生はほとんどの子が知らなかったようで、かなり関心を集めていました。結構有名な話だと思ったのですが、そうでもないのですね。

ということで、蚊が寄ってきたら息を止めましょう。蚊が諦めるか我々が力尽きるかの勝負です。

中学生たちがなぜ蚊の収集装置の説明?と思っている中、教授が説明を続けます。

蚊の収集は、デング熱のときのような公園内だけではなく、森林でも行われます。その際障害になるのが、「電源」の問題です。ファンを動かし、二酸化炭素を生成するのは相当なエネルギーを使いますので、なかなかバッテリーだけでは上手くいきません。もちろん化学物質を利用しても良いのですが、発生量はともかく、持続性に欠けます。つまり、薬品を使い切ったら終わりなのです。

そこで蚊の採集機では、酵母菌と砂糖水(の代わり)をパックに入れて利用をしているそうです。生体反応の特徴は、反応は穏やかながら持続時間が長いことです。平気で数日間二酸化炭素の発生が続くとのこと。これなら長時間の調査でも問題ありません。

その他もなかなか興味深いお話を伺うことができました。中学生たちも一生懸命聞いていました。さすがは実験教室に参加してくるような生徒ですね。


果たして実験は


ある程度時間が経過し、徐々に気体の発生量が増えてきました。BTB液やNR液を入れたビーカーにボコボコと泡が溶け込んでいきます。ですが、なかなか活発に、とはいかないものです。

そこで、生物の呼吸量を増やすためにお湯で温めることに。それまでもさながら卵を温めるかのように手で包み込んでいた生徒がいましたが、お湯パワーはもっと強力です。

ふと横を見ると、隣の斑の中学2年生はお湯に入れつつ瓶を周期的に揺すっています。強すぎず、弱すぎず、ゆったりと動かしていました。やはり賢い子はいるものですね、それが反応を促進させるには正解なのです。その斑はいち早く変化が見られました。

果たして真っ青だったBTB液はどうなったかというと。


これが


こうなりました

黄色になったのは、二酸化炭素が溶け込んで水溶液が酸性になったから。これは中学生でも知識として十分備えています。

そしてNR組は更にあざやかな結果に。


この微妙な色が


なんということでしょう

さて、この実験は現象だけでいえば、試験薬の色が変わっただけです。それでも中学生たちの目は輝きを失うこと無く、最後まで熱心に実験を追っていました。実験の目的、原理、結果に至るまでの過程を全て理解しながら行った実験だからこそ、単純なものでも子供たちを引きつけていた、そう考えます。

私も授業中、理解を深めたり興味を惹くために即興で実験めいたことをしますが、ただ知識を入れる目的だけ、評価をもらうためだけの実験ではありません。そこには原理があり、結果があるわけです。なぜそのような結果になるのか、正しく理解をすることが楽しさに繋がります。それが理科の力である考察力を伸ばすことになるでしょう。

世間一般における大学の研究室のイメージはどうでしょう。きっと、素人お断りな印象があると思いますが、世界トップの研究者がプレゼンテーションをする実験の質は非常に高いものがあります。
※大学の研究室はテーマ自体がよそと重複しない研究をしているところがほとんどですので、必然的に世界トップです

大学の教育レベルについて、昨今様々な意見があるようですが、相も変わらず最高レベルであると私は改めて思っています。私などとてもかないませんよ。


学食でのお食事タイム


実験も上手くいき、ご満悦な中学生たちは学食へ移動します。湘南キャンパスは理系ですので、メニューも理系らしい。

といっても食器がビーカーだとかそういう話ではなく、「安く量が多い」という傾向です。湘南キャンパスは生物系の学部ですのでそれほど極端ではありませんが、理系は往々にして男子の割合が多くなります。私のいた学部は90名中女子は3名。もはや絶滅危惧種です。

そんな男子ばかりの学校ですので、必然的に「質より量」なわけです。小中学生のお財布にも優しいところが良いですね。

さて、中学生に同行しているため、小学生たちの様子は全く分かりませんでした。案の定小学生組は時間が押しているとのことでしたので、先に食事を済ませておくことに。

ところが大半の中学生が食事を終えても、まだ小学生は合流してきません。結局40分ほど遅れて合流することができました。聞くと、時間が押していたにも関わらず、-20℃の世界を体験しよう!とのことで冷凍庫に入っていたとのこと。

何それ面白そうじゃないですか。

中学生たちは待ち時間がとても長かったため、アイスとか食べ始める始末。私もコーヒーを飲み、眠気を耐えることに(朝早かったので……)。


大学の魅力は小学生をも惹きつける


食事の後は、講義室へ戻り、日本大学生物資源科学部の紹介を聞きました。

さすがは大学、PVに芸能人を起用するあたり豪華ですね。私は知らない方でしたが、ドラマなどに出演している女優の内田理央さんです。彼女が大学の魅力を探るという設定の元、大学の紹介が進みます。准教授や学生さんまで出演されており、その演技に口元が緩みます(笑ってはいけません)。

小中学生は大学ってほとんど謎な場所だと思います。高校まではほとんど同じようなスタイルで授業や学校生活が進みますが、大学のそれは大違い。小中学生たちにとって、およそ普通の授業イメージとはかけ離れた大学生たちの様子はとても刺激的に、そして魅力的に映ったに違いありません。

その証拠に、置いてあったパンフレットをどんどん取っていきます。とりあえずもらっておくか、という様子ではなく、真剣に「知りたい」という欲求の元持っていったようです。


ウナギのなぞを追って


最後に博物館を見学しました。大学のキャンパス内に博物館があること自体普通ではありません。彼らが将来大学へ入ったとき、「あれ?ウチの大学は博物館ないのかな?」と考えやしないでしょうか。普通ありません。

そして、私が想像していた規模の3倍はあろうかという、かなり見所たっぷりな博物館でした。動物標本や骨格で埋め尽くされた1階をまず見学します。つい先日、上野の国立科学博物館を2時間ほど見てきたのですが、レア度でいえば負けていません。

※国立科学博物館は回るのに1日かかります

特別に許可を得て撮影することができた貴重な写真です。


かわいい。

3階に上がると、貴重なウナギの稚魚が見られるということでした。

ウナギの稚魚といえば、小学校4年生の国語で学習する「ウナギのなぞを追って」という単元を思い出します。小学生が学ぶ数少ない理系的な文章です。私はこの文が好きで記憶に残っていたので、「あのレプトセファルスがこの目で見られるのか!」と期待しました。

よくよく聞いてみたら、「ウナギのなぞを追って」の執筆者が、まさにここ日本大学生物資源科学部の塚本勝巳教授でした。

本人だった。

そりゃそうですね。あれだけの規模で研究ができるグループが世界にいくつもあるはずがありません。私はウナギ好きというワケではありませんが、やはり伝統的に日本の食文化を担ってきた魚ですから、絶滅の危機に瀕しているのは残念です。

この研究が進んで、天然のウナギにとってより住みやすい環境が整ってくる事を期待してしまいます。

さて、肝心のレプトセファルスくんがこちら。

まるで生シラスのよう。旨そう。

ほとんど人間の目に触れること無く生活しているはずの稚魚が水槽の中にいること自体、奇跡のように思えます。事実、卵の採取は奇跡に等しいレベルでした。色々お話を伺いましたが、校舎の屋上からグラウンドにある小石をピンポイントで狙うようなものらしいです。無理でしょそれ。

それが計算できるところまで研究が進んでいるとのことで、開いた口がふさがりません。


実験教室を終えて


物珍しい物を見たな、という感触の小中学生もいる中、今回の体験が起爆剤になる可能性を秘めた子もいるでしょう。実験中も熱心にメモをする様子や、1つ1つの作業を真剣に取り組む姿勢が際立つ子もいました。

特に小学生にとって、この体験は大きいと思います。中学生のように興味の指向が偏り始めている事もなく、ニュートラルな彼らには、知的な刺激が深いところまで届いたのではないでしょうか。

私は今回のイベント募集の際、「理科嫌いの子」の参加も呼びかけました。実際に参加した生徒の大半は理科が好きな子たちでしょう。ですが、私の予想通り、理科嫌いを根底からひっくり返すような体験になったと思います。

これをきっかけに理系の道へ進む、そんな出会いがあってもそれはそれで楽しいことだと思います。


願わくば、私に古典の楽しさをレクチャーしてくれるようなイベントがあったら良いですね。ぜひ参加をしてみたいと思います、途中で寝なければ。

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